とある紛争の大量虐殺(ジェノサイド) Ver.β(渡辺零著)を読ませていただいた

渡辺の書庫」の管理人さんの渡辺さんが書いたISBNのつかない小説は、とある魔術の禁書目録(以下インデックスとします)と虐殺器官のクロスオーバーとなっているようだ。
渡辺さんの記述を見てもらえば良く分かることだが、インデックスも虐殺器官も共に渡辺さん自信が非常に関心を持って接している作品ということなのだろう。
 
クロスオーバーというものの見方を広めにとって考えれば、有限の組み合わせから無限を作るというある種大きな希望を包含する性質のものだろう。有限の手立てから無限を生むというフンボルトの格言はもっと言語の根本のシステムに関するものだったかもしれないが、ここにきてフンボルトとクロスオーバーの不思議な関係が見えてくる・・・というか、私がちょっと思っただけですけど。
 
内容についていえば、虐殺器官の世界観にインデックスの人物が入るといった感じで、これが不思議と違和感がないのがね。
ただ、これって別にインデックスじゃなくても、異能力バトル系の何かだったら出来るんじゃないだろうか、とか、そういう批判はあるかもしれないけれど。まあ、世界を救いたいのは何も上条先生だけじゃないでしょうからね。
本書の売りは、なんといっても虐殺器官要素がたっぷり入っているっていうところですね。インデックスがハヤカワから出てたらこうなってたんじゃないか的な。かなり虐殺器官なんだけれど、まったく違和感がないことが素晴らしいですね、って同じこと2回言ってますか?まあ、重要なことですからね・・・
 
主人公は御坂美琴になるようです。違和感を感じない理由の一つは、御坂美琴という人物がとてもこの絶望感にマッチする人間であったということでしょう。
直情的で素直で強いんだけど、なんかためらいがちで不器用という。
渡辺さんの切り口で面白いところは、この御坂が所在ない力(エネルギー量的にも、ポリシー的にも)のありかを迷いの末に軍にゆだねてゆく感じが、これって一般人じゃなくても、最強の超能力者軍団でも大体おんなじだよね?っていう視点です。それは戦場が、『「誰か」が悪い』ではなく『「何が」悪い』のか問われるべき世界だったからということ。
 
もう一個面白かったのは、超能力って千差万別だし、超能力者なんて感情にムラが出やすいって相場が決まってるのに、軍の編隊なんて無理でしょうという意見を一蹴してそんなの訓練の反復でなんとでもなりますよ、という思い切った仮定を想定している部分が良かった。
超能力者に対して、お前らだってしょせん人間だろうに、社会の歯車だろうにと言い放つさまには胸が熱くなるよね。
なにより核が上手に使えるなら、暴れまわる超・超能力者たちも上手く使えるはずだ、という発想は納得できる部分がある。
 
今回はβ版だったんだけど、オフセットで全編出すみたいだから期待することにします。